公開日:2023.11.29 更新日:2024.02.29

インボイス制度を分かりやすく解説|必要な準備や変わることを紹介

概要

インボイス制度の導入は消費税に関わるとても大きな変更です。多くの事業者にとって影響のある変更にもかかわらず、しっかりと調べなければ難しい仕組みでもあります。
そこで今回は、インボイス制度がどんな仕組みなのか、わかりやすく解説をしていきます。どのような準備をしておけば良いのかなど疑問点を解消しておきましょう。

インボイス制度とは

インボイス制度は令和5(2023)年10月1日から開始する制度で、課税事業者はもちろん免税事業者の多くにも影響する消費税に関わる新しい制度です
場合によっては業務内容に関わってくることもありますし、インボイス対応によって事業者は手間が増えることも考えられます。仕組みをしっかり把握しなければトラブルに発展することもあるので、今回はなるべくわかりやすく説明を行っていきます。

インボイス制度の仕組みをわかりやすく紹介

インボイス制度では、売り手側の課税事業者が登録を行って、発行する請求書をインボイスに対応した形にします。
これによって売り手と買い手が消費税の税率や税額の認識を一致させ、請求書を保存することで税の流れを追いやすくします。
税額がはっきりとしているので、商品を仕入れた時に支払っている消費税と商品を売った時に受け取った消費税を一致させることができます。
インボイス制度が開始されるとインボイスに対応していない請求書では、販売時の消費税額から仕入れの時に支払った消費税額を控除できなくなります。

適格請求書(インボイス)とは

単にインボイスと言った場合、適格請求書の事を指します。適格請求書は、インボイス制度で定められた内容が記載されている請求書のことです。
適格請求書発行事業者にしか発行することはできず、以下の内容を記載することが定められています。

  • 発行事業者の氏名または名称および登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

適格請求書発行事業者とは

適格請求書発行事業者は、課税事業者のうち申請して登録した事業者のみがなることができます。端的に言えば、インボイスに対応した事業者ということです。
免税事業者の場合は登録ができないので、まずは課税事業者になる必要があります。登録が完了すると登録番号が割り振られ、適格請求書を発行することができるようになるため、適格請求書発行事業者から仕入れを行った場合、仕入税額控除を受けることができるようになります。適格請求書発行事業者以外から仕入れを行うと、仕入税額控除は受けることができません。

インボイス導入でどう変わる?

インボイス制度が導入されると、実際にはどのような影響があるのでしょうか。具体的にどんな変化が起きるのかを把握しておけば対策することもできますので、わかりやすく解説をしていきます。
売り手と買い手ではインボイスの影響範囲は異なるので、それぞれの立場においての変化を知る必要があります。
もちろん売り手と買い手の両方の立場になる場合は、どちらにも対応する必要があるでしょう。

売り手への影響

インボイス制度が開始すると、売り手は適格請求書を発行する場合、従来よりも請求書発行に手間がかかるようになります。これによって業務が圧迫される可能性が懸念されます。
免税事業者であればインボイス対応をするために課税事業者となる必要があり、業務内容だけでなく消費税を納税する負担が増えてしまうことになります。
免税事業者のまま維持する場合は、他社と比べて実質的に割高となるため価格調整を行うか、取引先の減少が予想されます。

買い手への影響

インボイス制度による買い手への影響は売り手と比較すれば小さくなります。それでも税の計算など一部で負担が増える可能性があります。
一番大きな影響は、取引先が適格請求書発行事業者なのかどうかの確認業務でしょう。既存の取引相手が適格請求書発行事業者であれば適格請求書を発行してもらうだけで問題ありませんが、そうでない場合は価格交渉を行うケースや、別の取引先を探すケースも出てきます。
また、インボイスに対応していない事業者との取引の場合、経過措置などの例外的な処理が増える点も影響が出てきます。

インボイス制度のメリット

インボイス制度のメリット

とても影響範囲の広いインボイス制度ですが、制度そのものにはメリットも存在します。
このメリットが事業者にとってどう捉えられるか、反応はそれぞれですが、多くの事業者はインボイスへの対応を行っていくわけですから、具体的にどのようなメリットがあるのかは知っておいて損はありません。
また免税事業者においては、メリットがどの程度あるのかを把握したうえで課税事業者になるかどうかの判断をするべきでしょう。

消費税の流れが追跡できるようになる

インボイス制度を導入することで、今までよりも消費税の追跡が容易にできるようになります。現在は消費税が8%と10%の2つが存在していますが、これを利用して仕入れと販売の消費税率を変更することで、金額を誤魔化すといった不正などが考えられます。
そこで適格請求書では税率や税額を記載し、それを保存することが義務付けられているため、消費税の流れがわかりやすくなって、こういった不正が行えない状態になります。不正を防ぐことは結果的に真っ当な取引をしている事業者を守ることにも繋がります。

消費税の計算や申告が簡単になる

インボイス制度の導入によって電子インボイス、つまり電子データでやり取りすることが簡単になります。これにより紙で保存する必要がなくなり、デジタル化が大きく進みます。
デジタル処理がメインになってくると会計処理も効率化がしやすくなり、ほぼ自動で税の計算や申告ができるようになるわけです。
電子インボイスをどれだけうまく活用できるかは事業者による差も大きいのですが、処理を簡単に行える環境になるのは1つのメリットと言えるでしょう。

消費税の還付を受けやすくなる

売上に対する消費税から、適格請求書が発行された仕入れの消費税を控除できますが、控除しきれない分が発生することがあります。
この場合は消費税の還付を受けることになります。還付を受けるためには課税事業者に限られるので、要するにインボイス対応をしている事業者は還付を受けられる可能性があるわけです。
そしてインボイス制度の導入で消費税管理が正しく行われることで、還付についても受けやすくなるということもメリットと言えるでしょう。

インボイス制度のデメリット

インボイス制度には明確にデメリットもあります。ネガティブなイメージを持っている方も多いと思いますが、その根拠がこのデメリットにあるのです。
課税事業者はデメリットを最小限にするように対策しなければいけませんし、免税事業者はこのデメリットを踏まえて課税事業者へ切り替えるかどうかの判断をする必要があります。

事務負担が増える

インボイス制度に対応するためには、間違いなく事務の負担が増えます。適格請求書の発行には決められた情報を記載しなくてはなりませんし、請求書の保存についても考えなくてはなりません。
取引先となる事業者がインボイス制度に対応しているかどうかのチェックも必要ですし、適格請求書の登録番号が誤っている場合は控除が受けられなくなる可能性があるので、間違いがないかを確認する必要もあるでしょう。
従来と比べると事務作業の量が圧倒的に増えてしまうのは大きなデメリットです。

取引関係が変わる

インボイス制度によって取引関係が変わることが予想されます。例えば従来からの取引先の中にインボイスに対応しない事業者が出てきた場合、そこからの仕入れでは消費税額の控除が受けられません。
実質的に値上げされたのと同じような状態になってしまいます。この場合だと値下げ交渉をして実質的な金額を揃えるか、別のインボイス制度に対応している事業者と取引を開始することになります。
免税事業者にとっては、かなり立場が弱くなってしまう可能性が高いでしょう。

手続きの手間が増える

まず第一にインボイスに対応して適格請求書を発行するためには、登録の手続きを行う必要があります。これに関しては1回登録をすれば済む話ですが、それでも手間が増える事には違いありません。
免税事業者の場合は、まず課税事業者になる手続きをする必要もあります。二段階で手続きが必要になってしまうので、これもかなり面倒です。
この他にも、インボイス対応のために会計ソフトを導入する場合の費用を補助金で補うようなケースだと、それらの申請手続きも別途行う必要があります。

インボイス制度に対応するための準備

インボイス制度に対応するための準備

インボイス制度での変化は大きいものなので、対応するための準備が必要になってきます。
対応の仕方は現在の事業の状況によっても異なりますので、立場を明確にして何を行えば良いのか考えましょう。
具体的には売り手側なのか買い手側なのか、そして課税事業者なのか免税事業者なのかで対応の仕方が異なってくるので、どこが当てはまるのかで判断してください。

売り手の課税事業者

売り手の課税事業者、つまりこれまで請求書を発行する立場だった事業者の場合、適格請求書発行事業者への登録手続きを行う必要があります。
そして要求された場合には適格請求書を発行する義務、必要に応じて適格返還請求書の交付や修正があった場合は修正した適格請求書の交付の義務も発生します。
これらの請求書を発行するため業務の見直しを行ったりテンプレートの修正を行う必要があるでしょう。
また適格請求書は保存の義務もあるので、保存して管理する準備も必要です。もちろん売上税額の計算についても対応できるように準備を進めます。

買い手の課税事業者

買い手側の課税事業者も準備をすることがたくさんあります。まずインボイスには特例などもあり、例えば少額の交通費や出張費などは対象外になるなど規定があるので、何がインボイスの対象になるかを確認するところから始めます。
次に既存の取引先の内容を見直して、取引先が格請求書発行事業者へ登録するかどうかを確認し、登録しない場合などは価格交渉を行うケースも出て来るかもしれません。
受け取った適格請求書は保存する必要があるので、その保存方法やルールを定める事も必要です。そして税額の計算と、免税事業者の特例措置などの帳簿への記載方法などを確認することも忘れてはなりません。

売り手の免税事業者

免税事業者の場合、取れる選択肢は従来通り免税事業者として活動を続けるか、インボイス制度に対応するために課税事業者になるかの2つです。
適格請求書を発行することができるのは課税事業者になって、適格請求書発行事業者として登録する必要があります。
もちろん課税事業者になるわけですから、これまで通り1,000万円未満の売上だったとしても消費税を納める必要があります。課税事業者として登録を行った後は、売り手の課税事業者と同じ準備も必要になってきます。

買い手の免税事業者

免税事業者で買い手である場合、インボイス制度のために準備することは特にありません。周りがインボイス制度にあわせて準備した結果、価格に転嫁することは考えられるため、間接的な影響はあり得ますが、事業として準備するものはないでしょう。
もちろん今後売上が伸びて課税事業者になる等の変化はあるかもしれないので、その時に備えて知識を蓄えておいたほうが安心です。

インボイス制度に対応する際の業務を効率化させるには

インボイス制度に対応するためには、どうしても事務への負担が大きくなります。逆に言えば負担が増えるのは事務関係の部分なので、工夫することで業務を大幅に効率化することもできます。
わかりやすく説明すると、インボイスに関わるデジタルな作業を自動化することで負担を軽減させるのです。自動化する手法はいくつか考えられますが、おすすめはRPAの導入です。

RPAの導入がおすすめ

RPAは、パソコン上で何度も行うような単純作業を自動化することができます。請求書の発行や会計処理などは、まさに条件に合致しているでしょう。
RPAの導入で煩雑なインボイス対応の業務を自動化できるだけでなく、自動化することで数字のミスなど人為的なトラブルを避ける効果もあります。操作が簡単なものや導入が安価なRPAもあるので、中小企業でも導入がしやすいのもお勧めの理由です。
インボイス制度への対応で事務作業がパンクしそうなら、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

RPAのインボイス制度への応用事例

RPAを導入するとインボイス制度に関わる多くの部分を自動化することができます。わかりやすく事例を紹介していきます。
まずRPAを活用すると、取引先の名前からインターネット経由で法人番号を自動で取得してリスト化することができます。法人番号を使ってインボイス登録している法人かどうかを国税庁の公開情報から自動で確認することができます。登録がない事業者には取得予定日を確認するメールを自動で配信するというところまで自動化している事例もあります。
また、適格請求書の発行に必要な項目を自動で入力することもRPAを活用すれば可能です。

インボイス制度に関するよくある質問

インボイス制度に関するよくある質問

インボイス制度についてさまざまな視点から解説してきましたが、まだまだ疑問は残っているかもしれません。インボイス制度は複雑な部分もあるので理解するのに時間がかかるでしょう。
ここからはインボイス制度によくある疑問をいくつかピックアップして回答していきます。

インボイス制度はなんのため?目的は?

インボイス制度の主な目的は消費税の額と率が正しく運用されているかを追跡しやすくし、不正を行わせないために導入されます。
特に現在の消費税は8%と10%が混在していますし、課税事業者と免税事業者が居ることで非常に把握しにくい状況になっています。
不正を行えないようにし、消費税を正しく運用できるようにするのがインボイス制度の主な目的です。ひいては、不正を行っている事業者が得をすることなく、真面目に経営している事業者を守る事にも繋がります。

全ての事業者がインボイスに対応する必要はある?

いいえ、インボイス制度は全ての事業者が登録する必要はありません。登録を行うかどうかは任意ですが、インボイス制度へ対応して登録を行わなければ適格請求書を発行することはできません。
例えば取引相手が一般顧客のみの場合、そもそも請求書を発行する必要はありませんから登録をしなくても問題は無いでしょう。
同様に取引相手が免税事業者や簡易課税事業者、あるいは適格請求書が発行できなくても問題ないという事業者のみを相手にする場合には不都合が生じません。

インボイス制度はいつから始まる?

インボイス制度が開始するのは2023年10月1日からです。これ以降の取引では適格請求書がなければ仕入税額控除を受けることができなくなります。
ただし、10月からいきなり控除できなくなるわけではありません。適格請求書がなくても3年間は80%控除、そこから更に3年間は50%控除、以降は控除が0と経過措置がとられています。
ただインボイス制度は23年10月からはじまるため、変化が一番大きいのはそのタイミングになります。

インボイス制度に対応しないと罰則はある?

インボイス制度そのものは登録が任意なので対応しなくても問題ありません。罰則自体がなくても、実質的には値下げ対応や取引先の減少などはあり得るかもしれません。
ただし、適格請求書発行事業者に登録したにもかかわらず、適格請求書を要求されても発行しない場合や、虚偽の内容で発行した場合にはペナルティが発生します。
この場合は罰則として、1年以下の懲役または50万円以下の罰金となるので注意が必要でしょう。

まとめ

インボイス制度は強制力のある制度ではありませんが、実質的に対応しなければならない事業者はとても多いでしょう。そしてインボイス制度に対応すると、事務仕事が増えてしまうのも間違いありません。
インボイス対応は、業務の効率化とセットで行わなければなりません。電子インボイスの導入、対応した会計ソフトの導入、これらと同時にRPAのような業務を自動化するツールの導入することで、事務の負担を大幅にカットすることができるでしょう。

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