公開日:2023.11.29 更新日:2024.03.01

電子帳簿保存法に対応する際に効率化も目指したいなら|事例や注意点を紹介

概要

電子帳簿保存法に対応しなければならないと聞いたことがある人は多いかと思います。ですが、インボイス制度と同時に語られることも多く、なかなか全容を掴めていないことも多いのではないでしょうか。
電子帳簿保存法への対応が面倒に感じることもありますが、しっかり準備をすれば以前より業務を効率化することすらできるかもしれません。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、2024年以降の電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関する法律です。端的に言えば、メールやインターネット経由で受け取る請求書や見積書といった書類は、電子データとして保存すると定めたものです。

従来は紙に印刷して保存していましたが、今後は印刷して保存するという対応が取れなくなるため、事業者はこの変化に対応していかなければなりません。

対象書類

まず電子的に保存することが認められるものをみていきます。以下のような書類は電子的に保存することができます。

  • 注文書、見積書、契約書、領収書
  • 仕訳帳、総勘定元帳、売掛帳、買掛帳、現金出納帳、固定資産台帳
  • 貸借対照表、損益計算書、棚卸表

これらに準ずるような書類も対象となるので、事業に関わる書類のほとんどが対象と言えますが、全てを電子的に保存する必要があるわけではありません。

紙媒体での保存が禁止され、電子的に保存することが義務となっているのは取引情報に関わる電子データで、具体的には以下のようなものが対象となります。

  • Web請求書
  • メールでの取引
  • EDI取引
  • クラウド取引

改正のポイント

改正の最も大きなポイントは、電子で受け取った取引データの保存が電子データのまま、と限定されたことにあります。電子データを受け取り紙に印刷して保存することが認められなくなったため、デジタル化がかなり進むと考えられています。

また、これに伴ってタイムスタンプ要件が緩和されたり、検索要件が緩和されるといった措置もとられています。

例えば検索要件では、記録すべき項目が減っただけでなく、売上高1,000万円以下の事業者では不要になるなど大幅に緩和されています。

電子帳簿保存法のメリット

電子帳簿保存法には、メリットも十分にあります。特にデジタル化が進んでいない企業にとっては大きなチャンスとも取れるので、このタイミングで一気にデジタル化を進めていきましょう。ここからは、電子帳簿保存法のメリットについて紹介していきます。

書類の保管スペースが必要ない

電子データの良いところは保管スペースが必要ないことです。紙媒体で保存している場合、取引数が増えればそれだけ紙を使うことになります。

紙は数を集めればかなりの厚さになりますし、とても重いです。紙を保管するスペースもばかになりませんから、それらが全て電子化できるのであれば非常に大きなメリットになるでしょう。

現場としても電子帳簿保存法の効果を一番実感しやすい部分と言えるかもしれません。

印紙代や印刷代などのコストが削減できる

例えば従来ではメールで添付されてきたPDFファイルを印刷して保存するといったことも頻繁に起こったかと思います。年間で考えると印刷に使っている紙やインクのコストもそれなりの金額になります。

電子データのまま保存して印刷する必要がなくなれば、それだけコストカットに繋がります。長期的な目線で見ればこのコストは無視できない金額となるのは間違いありません。

現場で働く社員の印刷をする手間が省けて、仕事が効率化するという点もある意味ではコストカットと言えるかもしれません。

書類管理の手間が省ける

沢山の紙に印刷された書類がある場合、どうしても書類を整理する必要がでてきます。書類の種類ごとに分類したり、何年何月の書類という形でファイリングして並べたり、さまざまな方法で管理していると思いますが、管理しておかなければ必要な時に探すことができないため必須の業務でした。

これが電子化することで管理の手間がかからなくなります。必要なデータがあれば検索ですぐに見つけることもできます。全ての書類を電子化することができれば、デジタル化の恩恵を最大限活用することができるでしょう。

セキュリティ対策になる

もちろん電子データもセキュリティ対策をする必要がありますが、ある意味では紙の資料よりも対策しやすくなります。

例えば紙の資料であれば閲覧する人間を制限することは難しいです。もちろん管理している場所への立ち入りを制限するといった方法で管理できないこともありませんが、一般的な事業者がそこまで管理するのは現実的ではありません。

一方でデジタルデータであれば閲覧権限の管理も簡単に行えます。

電子化によりデータの検索・共有が容易になる

電子化するとデータを探し出すのがとても容易になります。紙媒体ではいくら綺麗に管理していても、量そのものが多ければ探すのに時間がかかってしまいます。

一方で電子化したデータであれば、フォーマットなどをしっかり揃えることで検索も一瞬で可能になります。また、電子化したデータは共有も一瞬で行えるため、紙で管理するよりも利便性が何段も向上することになります。

電子帳簿保存法のデメリット

一見すると便利そうなデータの電子的な保存ですが、電子帳簿保存法にもデメリットは存在します。どのようなデメリットがあるのか把握したうえで対応していけば最小限の影響にすることができるので、まずは知る事から始めましょう。

特にデメリットの大部分は導入時の一時的なものが多いので、そこさえ乗り越えることができれば利便性の方が上回るのは間違いありません。では、詳しい内容をみていきましょう。

導入コストがかかる

まず一番はじめにデメリットとなり得るのが、導入コストがかかるという点です。例えば管理システムを新たに導入するコストや、既存の紙媒体のものを電子化して管理するためのスキャナーを購入するコスト、セキュリティー対策を行うコストなどさまざまなものが考えられます。

もちろん長期的に見れば紙を使わなくなることでコストを抑えられる部分もあるため、総合的にはコストを抑えられる可能性が高いのですが、導入時に集中的にコストがかかる点はデメリットと言えるでしょう。

電子データ化する手間がかかる

今後の取引が全てはじめから電子データになるのであれば気にすることはないデメリットなのですが、既存の紙媒体を電子データにして一緒に管理できるようにするためには電子データ化する作業が必要になってきます。

事業規模にもよりますが、かなり大量のデータをスキャンする必要があるので手間がかかるのは間違いありません。

こちらも導入コスト同様に、今後の利便性は高まる一方で導入時に集中して手間がかかる点はデメリットと言えます。

電子帳簿保存法の要件を把握した人材が必要

取引データなどを電子データで保存するためには、電子帳簿保存法の要件を把握した人材が必要不可欠になります。

もちろん要件自体は調べれば知ることはできるのですが、具体的にどんな内容は保存義務があり、どんな内容は電子保存が可能なのか、どんな要件で検索できるようにすれば良いのかなど、把握しておくべき内容は少なくありません。

しっかりルールに則って運用していく必要があるので、社内で要件を把握できている人材を育成、あるいは雇用する必要が出てきます。

電子帳簿保存法への対応は業務負担が大きい

電子帳簿保存法に対応できればメリットも大きいのですが、そのためには業務を進める方法を一部変更する必要が出てきます。現場レベルではITに疎い人材なども居ますし、長年同じ方法で仕事をしてきた人材を抱えていることもあるでしょう。

既に挙げている既存の紙媒体を電子化する負担、要件を把握した人材の育成なども考えると、一時的に業務への負担はかなり大きくなることは想像がつきやすいです

ただ、業務への負担という意味では、これまでの業務の進め方や社員の年代などの傾向にもよるので一概には言えません。

電子帳簿保存法対応時の業務を効率化させる方法

現場では電子帳簿保護法へ対応する業務負担が大きいわけですが、長い目で見ればメリットが大きいことは間違いありません。

法改正がある以上、そもそも対応しないということはできないので、どのように業務を効率化させていくのかを考えるのが良いでしょう。

アナログの時と異なりデジタルで行う業務は工夫次第でかなり大幅な効率化を行うことができます。

電子記録の導入

まずは紙媒体を無くし、請求書などをデジタルで作成・発行・管理ができるようにすると良いでしょう。紙媒体を後から電子化するのは非常に手間がかかりますから、はじめからペーパーレスで可能な限りデジタルデータのみを扱うようにします。

紙にかかるコストをよりカットすることができますし、二度手間になることもありません。また、アナログの時と違ってデジタルデータは同じデータを複数人が同時に扱う事も可能になります。こういった細かい部分も積み重ねれば大きな効率化に繋がってきます。

電子帳簿保存法対応の会計ソフトの活用

社内で独自に電子帳簿保存法に対応した処理をするのはとても難しいのが実情です。そこで電子帳簿保存法に対応した会計ソフトを導入して活用することで、比較的簡単に対応することができるようになります。

大手のクラウド会計サービスなどは大抵対応していると思いますが、目安としてJIIMA認証と記載されているものを選ぶと間違いがありません。JIIMA認証は公益社団法人日本文書情報マネジメント協会によって要件を満たしていると認証されたソフトになります。

RPAの導入

RPAは業務の単純な繰り返し行われる作業を自動化するツールのことです。RPAを導入するとパソコン上の操作を事前に設定した通りに行ってくれ、業務を効率化することが可能になるため、電子帳簿保存法でデジタル化が進むことでより効果的に利用することができるようになります。

こちらも導入コストはかかりますが、現在では中小企業でも導入する例が非常に増えていますので、もっと業務を効率化したいのであれば検討してみるのが良いでしょう。

RPAの導入でより効率化を推進できます

特に電子帳簿保存法に対応する場合、紙媒体を電子化する作業や要件を満たしたフォーマット通りに情報を入力するといった単純作業が何度も発生します。

こういった作業はRPAが最も得意とする分野なので、電子帳簿保存法によって増えてしまう業務を自動化し効率化することで、メリット部分だけを享受できるようになります

電子帳簿保存法を活用した効率化の実例

ここからは電子帳簿保存法を活用し、業務を効率化した実例をいくつか紹介します。

現在の業務内容によっては全く同じような効率化が行えるわけではありませんが、電子化を進めることで業務を効率化できる部分はかなり多いため、何らかの形で参考にすることができるのではないでしょうか。

より多くの実例を調べて、それを自社に応用することは効率化する上で非常に重要です。

事例①

まずは、領収書の管理を電子化したことで効率化した事例です。これまで領収書を紙で受け取っていた場合、申請書と領収書をセットで経理へ提出、提出されたものを経理担当者が会計システムへ入力するといった手順がとられていました。

電子帳簿保存法により領収書が電子化、電子化した領収書のデータを受け取り承認したものはRPAを活用して自動で会計ソフトへアップロード、会計ソフト側で自動で仕分けを行うといったフローを構築し、領収書を承認するというプロセス以外は自動化し大幅に効率化することに成功しています。

事例②

続いては、取引のFAXを電子化して業務を効率化した事例です。現在でも企業間のやりとりにFAXは現役で利用されている場面が多く存在します。FAXといえば紙のイメージもありますが、ペーパーレス化して送られてきたFAXをPDFなどの形で保存するFAXサーバーという仕組みもあります。

直接電子データとして扱えるため、注文データをRPAで自社システムへ自動で入力するといった効率化を行うことができます。もし、データ化されていない場合でも、AI-OCRを活用しデータ化した後に、RPAでシステムへ入力するというフローも実現可能です。またFAXサーバーの中には電子帳簿保存法に対応しているものもあり、そういったサービスを活用すればそのまま保存するだけで要件を満たすことができます。

電子帳簿保存法への移行にあたっての注意点

電子帳簿保存法に対応して電子データでの管理に移行するためには、いくつか注意しなければならない点があります。仕組みをきちんと把握していなかったことが原因で大きなトラブルに発展することもあるので、しっかりと注意しつつ移行していくようにして下さい。場合によっては違反ペナルティが発生してしまうこともあります。では、詳しい内容をみていきまよう。

法令遵守の確認

電子帳簿保存法は法律なので、定められたルールを守る必要があります。例えば取引に関わる電子データは保存しておかなければなりません。

また売上高が1,000万円を超える事業者は、電子データを検索要件を満たした形にする必要もあります。

こうした条件をしっかりと守って管理していくことが事業者には求められていますので、杜撰な管理をしないようにしましょう。守らなかった場合、法人なら会社法違反で過料が課せられたり、社会的な信用が落ちてしまったりすることもあります。

追徴課税の発生や、個人事業主でも青色申告の取り消しといった可能性が出てきます。

データセキュリティの強化

取引のデータなど重要な電子データを保存するわけですから、データセキュリティに関しても注意が必要です。例えば、データが破損したり誤って削除してしまうといったリスクがあります。

もちろんハード面の故障もあり得るので対策が必要です。更にインターネット経由で攻撃を受けるリスクもあるので、信頼のできるクラウドサービスを活用したり、場合によってはインターネット接続しない形でバックアップするといった対応も必要かもしれません。

もちろんパスワード設定やアクセスログを管理する、データの持ち出しに関するルールを設けるといった方法も有効です。

社内の意識改革

電子帳簿保存法に対応していくということは、業務全体がデジタル化していくという事でもあります。そしてデジタル化すれば業務を効率化する方法も多く、業務内容そのものを見直していく必要もあります。

そこで大事になってくるのが社内全体の意識改革です。働き方そのものが変化していくわけですが、意識改革ができていないと効率化することは難しくなります。うまく情報を共有し、効率化することで働き方がどのように良くなるのかを全員が知っている状態にするのが理想的でしょう。

RPAならアシロボにお任せください

デジタル化した業務を効率化したいのであればRPAの導入がお勧めです。電子帳簿保護法に関する業務の大部分も自動化できますし、既存の仕事も改善できる可能性があります。

例えば会計ソフトを活用しているとしても、更に会計ソフトをもっと便利に使うための自動化ということまで可能になります。

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